大株主とはどんな存在?その定義や権限、企業経営に与える影響を解説

株式・投資

現在、企業経営において「もの言う株主」は見過ごせない存在です。アクティビストとも呼ばれ、資金の貸し手として大きなリスクを負う株主が企業の経営について発言するケースが増えています。
特に、大量の株を保有している大株主は企業の経営方針を大きく左右することもあります。

本記事では、大株主とは一体どんな存在なのか、株主としての権利や会社との関係とともに解説します。大株主が企業にどんな影響を及ぼすのか、企業は大株主とどう付き合っていくべきかを知りたい方はぜひ参考にしてください。

企業と大株主をつなぐ『IR-navi』とは

大株主とは

大株主とは企業の株式の大多数を保有している株主のことを言います。発行済み株式に対して保有株の比率が高い法人や個人を指しますが、実は「何%以上の株を保有していれば大株主」といった明確な基準はありません。

しかし企業経営や株価がその動向に影響を受けることもあるため、経営者や投資家にとって「大株主」は注目すべき対象です。

主要株主

主要株主とは議決権のある株式の10%以上を保有する株主を言います。株主は議決権を行使して株主総会で直接、企業の意思決定に関与できます。

企業の経営方針を左右しうる議決権を多く保有していますから、この主要株主のことを指して「大株主」という場合もあります。

筆頭株主とは

筆頭株主とは議決権のある株式を最も多く保有している株主のことを言います。日本では創業者やその一族、役員、親会社などがこの筆頭株主にあたるケースは多いです。

議決権を多く保有し、企業の意思決定に与える影響が大きいため、筆頭株主に異動があった場合、上場企業はその旨を開示する義務があります。

支配株主とは

支配株主とは、企業の株式の過半数を保有する株主のことを言います。支配株主である法人株主は通常親会社とされます。支配株主も企業の意思決定を左右する影響力を持つため、支配株主を有する上場会社は支配株主に関する事項を開示する義務があります。

5%ルールとは

上場企業の発行済み株式数の5%を超えて保有する株主は、「大量保有報告書」を金融庁に提出しなくてはいけません。正式には「株券などの大量保有の状況に関する開示制度」と言います。

特定の第三者や投機的なファンドが大量保有者となった場合、株価が予想外の動きをする恐れがあるため、保有者の情報を公開することで市場の公平性・透明性を高めて、一般投資家を保護することが目的です。

大株主の権利と責任

株主は出資額に比例した数の株を保有し、その持ち株数や割合に応じてさまざまな権利を保有します。特に保有株式数の多い大株主は、株主の中でも発言力・影響力が大きいため、動向には注意が必要です。

株主が持つ権利とは

株主が企業の経営に直接参加することはありませんが、保有する株式数に応じて「株主権」を持ち、間接的に企業経営に参加できます。

この株主権は「自益権」と「共益権」の2つに分けられます。

自益権

自益権とは、株主が企業から金銭的・経済的な利益を受ける権利のことを言います。
代表的なものには、配当を受ける権利(利益配当請求権)や企業が解散する際に出資金の返還を受ける権利(残余財産分配請求権)があり、株主個人の利益となるものを指します。
他にも、自益権には以下に挙げるものがあります。

新株発行差止請求権:不利益を受けるおそれがある場合、新株発行の差し止めを請求できる
新株引受権:企業が新規に発行する株式を優先して引き受ける
株式買取請求権:合併や会社分割、事業譲渡など自身の利益に重大な影響を及ぼす議決が決定した場合に、企業に対して保有する株式の買い取りを求めることができる

共益権

共益権とは、株主が企業の運営や経営に参与する権利のことを言います。代表的なものには、株主総会の議決に加わる議決権があります。

共益権は、1株しか保有していない株主でも行使できる「単独株主権」と、一定割合または一定数の株式を保有する株主だけが行使できる「少数株主権」の2つに分けられます。代表的なものとしては、単独株主権なら株主総会の出席権、少数株主権なら株主総会招集請求権があります。

持ち株数に比例して、この権利が企業に与える影響は大きくなります。どのような権利が行使できるのか、詳しくは「持ち株比率に応じた大株主の権利」の項で説明します。

株主が負う責任とは

株主は企業に対してさまざまな権利を持っていますが、同時に責任も果たしています。例えば、株式を保有している企業の業績が落ち込んで株価が下がった場合は、株式価値の毀損という形で損失を被ります。

また、株主の出資金は企業の財産となるため、企業が倒産したときは出資金を返還してもらえない恐れもあります。このように株主は企業に出資した出資金の範囲内で責任を負っています。これは言い換えると、出資した金額以上の責任を問われないということです。

もしも、債務超過で企業が倒産した場合、出資金は戻らないかもしれませんが、株主は債権者に返済金を支払ったり、従業員に給与を支払ったりする必要はありません。これを「株主有限責任の原則」と言い、株主に出資金以上の責任を負わせないことで出資を容易にし、企業が資金を獲得しやすくしました。

持株比率に応じた大株主の権利

株主は株式の保有割合に応じて、さまざまな権利を持っています。持ち株数に比例して、行使できる権限は大きくなっていきます。

この項では、持株比率それぞれに応じて株主がどんな権利を持っているのか、企業が把握しておくべき重要なものを中心に解説していきます。

1%以上

1%以上の株式を保有する株主は、株主提案権を持ちます。株主提案権とは、株主が新たにある事柄を株主総会の議題とすることを提案する権利や、すでに提出されている議案について別の議案を提出する権利などのことを言います。

1%以上の株式を保有する株主は、大株主ほどの影響力はありませんが企業経営に対する画期的な提案を生み出したり、鋭い問題提起のきっかけを作ることもあります。

少数株主とはいえ企業にとっては無視できない存在です。

3%以上

3%以上の株式を保有する株主は、株主総会の招集や役員解任の請求権を持ちます。
そのほか、会計帳簿閲覧および謄写請求権があり、この権利が行使されると企業は経営状況を開示しなくてはいけません。

どれも経営方針を大きく変える権利というわけではありませんが、株主に経営の実態をチェックされることになりますので、企業には緊張感を持った対応が求められます。

1/3以上

1/3超の株式を保有する株主は、単独で特別決議を拒否する権利を持ちます。
特別決議とは、合併や解散、定款変更、取締役の解任など企業にとって重要な決定を行う際に必要な手続きです。

特別決議を行うためには株主総会に出席した株主の2/3以上の賛成が必要となるため、もし単独で1/3超の株式を保有する株主が反対に回れば決議を行うことはできません。
企業はこの株主の意向を常に意識しておく必要があります。

1/2超

1/2超の株式を保有する株主は、単独で株主総会の普通決議を行う権利を持ちます。普通決議では、取締役の解任や役員の報酬額の決定、会社の剰余金の分配や分配金の増額などを行います。

株主総会は多数決によって意思決定をしますので、全体の過半数の株を保有している株主なら、会社の意思決定のほとんどを自ら行うことができます。ほぼ企業の経営権を握っている状態と言えるでしょう。

ただ、特別決議については2/3以上の賛成が必要となるため、単独で通すことはできません。

2/3以上

2/3以上の株式を保有する株主は、単独で特別決議を可決する権利を持ちます。先述したように、特別決議は企業経営に関する重要事項を決定できる場です。2/3以上の株式を保有する株主なら、企業の経営方針について一人で意思決定することが可能となりますので、創業者やオーナーであれば、この持ち株比率を維持しておきたいところです。

単独で保有が難しい場合は、他の創業メンバーや信頼できる投資家など複数の株主とともに保有し、安定株主を確保しておきましょう。

企業と株主をつなぐ『IR-navi』はこちら

【事例から見る】大株主が企業の経営権に及ぼす影響

ここでは、大株主が企業の経営権に及ぼす影響を事例から見ていきます。

①ライブドアとフジテレビ

2005年にライブドアがニッポン放送に対して敵対的TOB(株式公開買付)を行い、ニッポン放送の子会社であるフジテレビの経営権を握ろうとした事例です。

なぜライブドアがフジテレビの株ではなく、ニッポン放送の株式を取得しようとしたのかというと、子会社であるフジテレビのほうが親会社のニッポン放送より企業規模が大きく、ニッポン放送の株を取得するほうが容易であると考えたためです。

結果的には、ニッポン放送が保有していたフジテレビの株式を手放したため、ライブドアはフジテレビの経営に関与する権利がなくなってしまいました。その後、フジテレビとライブドアは和解しましたが、持ち株比率によって全く別の会社に経営権が取って代わられる可能性があると日本中が痛感した事例でした。

②大塚家具

創業者である父・大塚勝久元会長と長女の久美子社長が、大塚家具の経営権を巡って行った委任状合戦(プロキシーファイト)です。経営方針を巡って意見の対立した2人が、互いの退任を要求する役員人事案を株主総会に提出し、株主に支持を求めました。

株主総会において、株主は保有する株式数に応じた議決権を行使できますが、企業の意思決定には所定の議決権数が必要です。普通決議なら議決権の過半数、特別決議なら2/3以上を確保しなくてはなりません。そのためにTOBなどで株式を取得する方法もありますが、容易なやり方ではありません。

この大塚家具の事例では、議決について会長・社長それぞれが株主から自身を支持する旨の委任状を集め代表取締役の座を争いました。結果は、久美子社長の続投が賛成多数で可決され、父親で創業者の大塚勝久元会長は退任となりました。

経営権を左右するのは持株比率だけでなく、多くの議決権を保有する株主の支持を取り付けることも重要であると知らしめた事例です。

③伊藤忠商事とデサント

スポーツウェアメーカー・デサントの筆頭株主である伊藤忠商事がTOBによりデサントの経営権を全面的に握ろうとした事例です。

もともと両者の関係は良好でしたが、経営方針の食い違いや経営陣の協議不足により、対立が深まっていきました。伊藤忠商事はデサントの経営体制刷新を求め、デサント株の保有比率を引き上げて経営権の掌握を目指しました。

当初、伊藤忠商事はデサント株の30.44%を保有していましたが、これを40%まで引き上げることを目標にTOB(株式公開買付)を行いました。1株あたりの価格はTOB直前の株価の5割高という好条件。売却を希望する株主より目標株数の2倍以上という多数の応募を受け、TOBは成立しました。

このTOBに伊藤忠商事が投じた資金は約200億円にも上ったと言われています。

安定経営には大株主の支持が不可欠

安定経営のために、企業は大株主との友好的な関係を築いておくことが重要です。日頃からコミニュケーションを取って信頼関係を築いたり、ターゲティングやアプローチを行って大株主の動向をチェックしておくことも必要でしょう。

IR-naviは国内外機関投資家による株式保有状況を確認できるほか、投資家ミーティングの運営・管理機能も備えています。これにより株主状況を把握し、投資家とのコンタクトの全てを管理することができます。投資家へのアプローチやIRアクションに不可欠なツールです。株主との良好な関係構築のために、IR-naviの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

企業と株主をつなぐ『IR-navi』はこちら

タイトルとURLをコピーしました