株主の権利とは。1株でも行使できる!持株比率に応じた権利も解説

株式・投資

企業にとって、株主は最も重視するべき存在です。株主は出資者であると同時に、与えられた権利を使って、経営や人事など会社の重要事項に対して意思決定をする力を持っています。

本記事では株主の持つ権利を、その内容や持株数に応じて解説します。また権利行使に際して必要な要件や、権利の制限を可能にする方法も合わせて紹介します。

株主の持つ権利が会社にどのような影響を与えるのか、会社は株主の権利行使に対してどう対処すべきか知りたいという人はチェックしてください。

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株主の持つ権利とは

会社への出資と引き換えに株式を受け取る投資家のことを株主と言います。株主は出資額に応じて、会社から様々な権利が与えられます。この権利のことを「株主権」と言います。

株主権には配当を受け取る権利や、会社の経営方針や意思決定に対し株主としての意思を反映させる権利があります。

こうした権利を持つ株主は、会社にとって最も重要なステークホルダーと言えるでしょう。

株主が持つ2つの権利

株主権には大きく分けて「自益権」「共益権」の2つがあります。
このパートではそれぞれについて詳しく解説します。

自益権

自益権とは、株主が会社から経済的な利益を受けられる権利をいいます。権利を行使することで株主個人だけが利益を得られます。代表的なものに、配当を受け取る権利があり、持ち株数が多くなればなるほど、当然、受けられる利益も多くなります。

自益権の主な例

剰余金配当請求権・・・配当金を請求し、受け取ることができる権利です。一定期間または特定日に株式を保有している株主に権利があります。

残余財産分配請求権・・・会社の解散・清算に際し、すべての債務者への返済後に残った財産について、分配を請求できる権利です。

株式買取請求権・・・会社の根幹に関わる決議に反対の場合、会社に株式の買い取りを請求できる権利です。株主は株式を売却することで投資資金を回収し、会社との関係を絶つことができます。

共益権

共益権とは、株主が会社の経営に参加できる権利のことです。経営参画権とも呼ばれ、権利行使が株主全体の利益に繋がります。代表的なものに議決権があり、これを行使することで会社の経営方針などの重要事項に関与できるため、会社にとっても大きな影響のある権利です。

共益権の主な例

議決権・・・株主総会に参加して決議ができる権利です。役員の専任・解任など重要な決議での投票や、総会で意見を言ったり意思表示ができます。

株主提案権・・・株主総会で取り扱う議題・議案を株主が提案する権利です。この権利の行使により、経営に対する問題提起などが行われ、株主総会に株主の意思がより強く反映される傾向があります。

株主総会招集権・・・通常、株主総会は会社の代表取締役が招集します。しかしこの権利の行使によって、株主が株主総会の開催を会社に求めることができます。

株主総会決議取消権・・・株主総会での決議事項について定款・手続き・法令の違反があった場合に、株主がその決議の取り消しを求められる権利です。

単独株主権・少数株主権とは

株主の権利は、1単元株でも保有していれば行使できる単独株主権」と一定数の株式を保有していれば行使できる少数株主権」の2つに分けられます。

先述した自益権は1単株でも保有していれば行使できる単独株主権であり、共益権は単独株主権と少数株主権に分けられます。持株数や議決権のある株の保有数に応じて、会社の経営や意思決定を左右する強力な権利を持つこともあります。

このパートでは、単独株主権と少数株主権について、具体例や事例を交えて詳しく解説していきます。

単独株主権

単独株主権とは、1単元株でも持っていれば行使できる権利のことです。

1単元株とは通常の株取引で売買される株数のこと。1株のこともあれば、10株、100株のこともあります。1単元を何株にするかは基本的に企業が任意で決められます。

会社法では株式を大量に保有する大株主だけでなく、最低1株しか保有していない株主にも一定の権利を認めています。

単独株主権の主な例①代表的なもの

単独株主権の代表的なものには、先に挙げた「剰余金配当請求権」「残余財産分配請求権」「株式買取請求権」などの自益権があります。自益権=単独株主権となる点に注意しましょう。

このほか、単独株主権には「株主総会議決権」も含まれます。
最も少ない場合、1株でも保有していれば株主は会社の意思決定に参加できるということです。

単独株主権の主な例②招集

単独株主権のうち、招集にあたるものに「取締役会招集請求権」があります。取締役会を設置している会社に対して、各取締役に代わり株主がその招集を請求できるものです。取締役が会社の目的外の行為や、法令・定款に違反する行為をした場合またはしようとするときに、この権利を行使できます。

単独株主権の主な例③閲覧

単独株主権の閲覧権に関わるものはいくつかあります。主な例は以下の通りです。

定款の閲覧等請求権・・・定款の閲覧やその謄本等の交付を請求できる権利です。
株主総会議事録の閲覧等請求権・・・株主総会議事録の閲覧または謄写を請求できる権利です。
取締役会議事録の閲覧等請求権・・・取締役会議事録の閲覧または謄写を請求できる権利です。
計算書類等の閲覧等請求権・・・計算書類等の閲覧または謄本等の交付を請求できる権利です。

これらの権利の行使は、直接会社に大きな影響を与えるものではありませんが、株主が会社の経営状態や意思決定プロセスをチェックできるため、会社には緊張感を持った対応が求められるでしょう。

単独株主権の主な例④差し止め

単独株主権のうち、差し止めに関する権利です。

募集株式発行、自己株式の処分、新株予約権発行差止請求権・・・募集株式の発行、自己株式の処分、新株予約権の発行停止を請求できる権利です。

<サン電子が新株予約権付社債の発行差し止めを求められた事例>
サン電子が2020年1月に新株予約権付社債について、同社の株式のうち3%を保有するオアシス・マネジメント系ファンドより、発行差し止めの訴訟を提起されました。ファンドは新株予約権について「著しく不公平な方法で発行した」と主張しています。
(協議の結果、裁判外の和解によって解決しています。)

取締役の違法行為差止請求権・・・取締役の違法行為によって、会社に著しい損害を及ぼす恐れがあるとき、当該行為等を止めるよう株主が請求できる権利です。

単独株主権の主な例⑤提起

単独株主権のうち、提起に関する権利です。

株主総会における議案提出権・・・株主総会における議題や議案を株主が提案し、株主総会でそれを取り扱うよう請求できる権利です。

株主総会決議取消の訴え提起権・・・株主総会決議の取消しを請求できる権利です。
代表訴訟提起権・・・会社に対して役員等の責任を追及する訴えを提起できる権利です。

少数株主権

少数株主権とは、一定数の株式または総株主の議決権の一定割合以上を保有していることで行使できる権利のことです。

大株主になるほど行使できる権利は大きくなり、会社の経営方針や意思決定への影響力を強めることができます。

中には、一定期間の継続保有が権利行使の条件になっているものもあり、必ずしも持株数や持株比率だけが要件ではありません。

議決権の1%

議決権のある株式のうち1%を保有している株主は以下の権利を行使できます。

株主総会の検査役選任請求権・・・株主総会に係る招集の手続きや決議の方法を調査させるため、検査役の選任の申立てをすることができる権利です。

株主総会議題提案権(取締役会設置会社の場合)・・・株主総会における議題や議案を株主が提案し、株主総会の議題とすることを請求できる権利です。(取締役会非設置会社では単独株主権です。)

<東芝が取締役専任について株主より議題提案を受けた事例>
2020年7月の東芝定期株主総会において、同社株を保有するアクティビストファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネジメントは、ガバナンス強化を理由にエフィッシモ創設メンバーである今井氏を始めとした3人を社外取締役に迎えるよう要求。
株主総会において東芝側の現社長再任案と、エフィッシモ案が議案としてかけられ、東芝案は57%、エフィッシモ案は43%の賛成が得られました。
エフィッシモの株主提案は否決される形となりましたが、「モノ言う株主」として一定の存在感を示した事例となりました。

議案通知請求権(取締役会設置会社の場合)・・・株主が提出しようとする議案の要領を他の株主に通知することを請求できる権利です。これによって、株主は自身の提案内容について他の株主にも広く賛同を募ることができます。(取締役会非設置会社では単独株主権です)

議決権の3%

議決権のある株式のうち3%を保有している株主は以下の権利を行使できます。

業務執行に関する検査役の選任請求権・・・業務の執行について不正や定款違反が疑われる行為があったときに、その調査のため、検査役の選任の申立てができる権利です。

会計帳簿閲覧請求権・・・会社の営業時間内ならいつでも、会計帳簿またはこれに関する資料の閲覧・謄写を請求できる権利です。(計算書類閲覧請求権は単独株主権です)

役員解任請求権・・・役員解任の訴えを提起できる権利です。役員の職務執行に際して不正や定款違反などが疑われるにも関わらず、役員解任議案が否決された場合などに行使できます。

株主総会招集請求権・・・取締役に対して株主総会の招集を請求することができる権利です。請求にも関わらず株主総会が招集されないときは、株主自ら株主総会を招集できます。

議決権の10%

議決権のある株式のうち10%を保有している株主は以下の権利を行使できます。

会社解散の訴え提起権・・・やむを得ない事由により、訴えをもって株式会社の解散を請求できる権利です。例えば、会社の業務が困難な状況に陥り、甚大な損害が生じた場合またはその恐れがある場合や、会社の財産の管理や処分に問題があり、会社の存続を危うくする場合などが当てはまります。

募集株式発行時の株主総会請求権(公開会社)・・・募集株式を発行することにより支配株主が変わるときに、株主総会で募集株式の発行について決議を行うことを要求できる権利です。

募集新株予約権発行時の株主総会請求権(公開会社)・・・募集新株予約権を発行するときに、新株予約権に株式が交付されることによって支配株主が変わる場合、株主総会で募集新株予約権発行について決議を行うことを要求できる権利です。

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継続保有要件

公開会社の場合は少数株主権の行使に当たって、持株比率に加えて継続保有の要件があります。(非公開会社の場合はありません。)

継続保有要件とは、権利を行使する6ヶ月前から継続して株式を保有していなければ、権利を行使できないというルールです。

この継続保有要件が必須となる権利は、先に挙げた株主総会議案提案権・株主総会の検査役選任請求権・役員解任請求権・株主総会招集請求権・会社解散の訴え提起権などがあります。

株主平等の原則

会社法には「株主平等の原則」が定められています。会社は株主をその保有する株式の数に応じて平等に扱わなくてはいけないという原則のことです。同一種類の同数の株を持つ株主間で、取扱いに差を設けてはいけません。

この原則には少数株主の権利を保護する目的があるため、もしも会社が株主平等原則に反する行為を行った場合は当該行為は全て無効となります。

しかし、「平等」とは、株式1株についての平等をいいますので、実際にはより多くの議決権を保有する株主の権利が優先されることになります。一定の株数や一定の割合の議決権を有する株主に認められる少数株主権は、株主平等原則の例外といえるでしょう。

権利を制限する種類株

株式には、同一の権利が付されている普通株式のほかに「種類株(種類株式)」があります。種類株は普通株式と違い、配当金の分配や議決権、譲渡に関して制約や特典のある株式です。

種類株は「会社の経営にもっと参加したい」「配当など利益分配を増やしてほしい」などの株主のニーズに応えるものであると同時に、会社にとっても資本政策や買収の防衛策として有用です。

無議決権株式・・・議決権を行使できない株式です。代わりに、普通株式に比べて高い配当金がつきます。会社の経営よりも配当収入を重視する株主向けであると同時に、会社にとっては議決権を付与しないことで株主による会社支配に歯止めをかけられるメリットがあります。

拒否権付種類株式・・・重要事項に関する拒否権が付与された株式です。会社に友好的な第三者の株主に発行し、敵対的買収や合併提案があった際に拒否権を発動してもらうことで、自社の防衛策となります。

株主には権利だけでなく責任もある

ここまでのパートでは株主の持つ権利について説明してきましたが、株主が持つのは権利ばかりではありません。実は、責任も課されているのです。

株主には出資した資金の範囲内で責任が生じます。これを「株主有限責任」と言います。

会社が負債を抱えて倒産した場合、債務者への返済が優先されるため、返済後の残余財産がなければ株主が出資した資金は戻ってきません。その代わり、株主には会社の債務を返済したり会社へ追加出資を行う義務もありません。

また、上場会社の株主なら、会社の業績や株価が下がることで購入した株式の価額が下がったり配当金が減少したりするリスクがあります。しかし、これも株式の購入価額以上の損失を被ることはありません。

会社の利益最大化を目指すという目的は会社も株主も同じ

株主が行使する権利は、会社の経営に大きな影響を与えます。会社は株主の意向を無視して経営を行うことは決してできません。時には、会社と株主の間で意見が対立することもあるでしょう。しかし会社も株主も、会社のさらなる成長や利益の最大化を目指すという同じ目標を持っているはずです。

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