日本の個人・法人大株主ランキング!大株主が企業に及ぼす影響も解説

株式・投資

企業の経営や株価に大きな影響を及ぼす権利を持つのが大株主です。誰が大株主であるか、会社と大株主の関係が良好であるかどうかが、投資家の銘柄選定や売買の基準となることもあります。

本記事では、個人・法人別の日本の大株主ランキングを紹介。また自社の大株主を確認する方法や、大株主が企業に与える影響も事例つきで解説します。

「日本の大株主にどんな個人・法人がいるのかを知りたい」「大株主がどんな権利を持ち、会社にどんな影響を与えるのかを知りたい」という方はぜひ参考にしてください。

大株主とは?

大株主とは、企業の株式の大多数を保有している大口の株主のことです。特に持ち株比率が高い法人や個人の株主を指して言います。

実は「発行済株式数の〇%以上保有していれば大株主」といった明確な基準はありません

しかし大株主が誰であるかによって、企業経営の方針や株価に影響を及ぼすこともあるため、市場や投資家はその動向を常に注視しています。

株主総会で議案に票を投じられる権利を議決権と言いますが、この議決権付株式を10%以上保有する株主を「主要株主」と呼びます。上場企業の場合はこの主要株主に変更があった場合、速やかに開示することが義務付けられています。

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大株主の持つ権利とは?

このパートでは株式の保有割合ごとに株主が持つ権利を解説します。
発行済株式全体に対し、議決権株式をどれだけ保有しているかという「持ち株比率」によって、以下のように株主が行使できる権利は異なります。

  • 1%・・・株主総会において議案・議題を提出できる株主提案権を持つ
  • 3%以上・・・株主総会の招集を請求できる。また、会社の帳簿など経営資料を閲覧または写しを請求できる権利を持つ
  • 1/3以上・・・定款変更・合併・解散など企業にとって特に重要な事項を決定する『特別決議』を単独で阻止できる
  • 1/2超・・・取締役の選解任・役員報酬の変更・剰余金の配当など、企業の基本的な事項を決定する『普通決議』を単独で可決できる
  • 2/3以上・・・『特別決議』を単独で可決できる

大株主をチェックする方法

このパートでは企業にとって重要な存在である大株主とその持ち株数や持ち株割合を確認する方法を紹介します。

①大量保有報告書(5%ルール)

大量保有報告書とは、上場企業の発行済み株式数の5%超を保有する株主が大量保有(5%)することとなった日から5日以内に提出を義務付けられている書類です。金融庁の「EDINET(エディネット)」で適宜チェックできます。

一般には「5%ルール」とも呼ばれています。特定の投資主体に株式が買い占められると株価が乱高下する恐れがあるため、大量保有情報を公開して市場の透明性を確保し、投資家を保護することを目的に導入されました。

以下に、大量保有報告書に記載されている事項の一例を挙げます。

  • 提出者(大量保有者)に関する事項
  • 保有目的(純投資・政策投資・経営参加・支配権取得など)
  • 保有株券の内訳(保有株数や保有割合)
  • 取得・処分の状況(取引日・取引数量・取引価格など)

大量保有者は売買などで株式の保有割合が1%以上増減した場合は「変更報告書」を提出する義務も課されています。

純投資を目的として日常的に大量の株式を売買する機関投資家には、大量保有報告は3ヶ月に1度と基準が緩和されます。

しかし、投資ファンド等で特例報告を本来の目的外に利用するケースが多く見られるようになったため、2007年1月1日から基準日を「3ヶ月」から「毎月2回」とする新ルールが適用されています。

②四季報

会社四季報には持ち株数順に上位10位までの大株主の情報が載っています。

原則として、直近の本決算・中間決算期末のデータが掲載されますが、期中に大きく保有数や保有割合の増減があった場合はその情報が反映されていない場合もあります。

以下に、四季報に記載されている事項の一例を挙げます。

  • 株主名(略称)
  • 持株数
  • 発行済株数に対する持株比率(%、小数点第2位以下切り捨て)

③有価証券報告書/半期報告書

有価証券報告書とは上場企業が金融庁へ提出する書類で、事業年度ごとに営業内容や経理の状況が記載されているものです。

掲載する内容は規則で定められており、企業の概況・事業の概況・経理の状況・財務諸表などはどの会社も毎年同一の形式で作成しているため、他社との比較はもちろん前年との比較もしやすいです。

この有価証券報告書の「大株主の状況」に大株主の名前や所有株式数が掲載されています。

以下は、「大株主の状況」に記載されている事項の一例です。

  • 大株主の氏名または名称
  • 大株主の住所
  • 所有株式数
  • 発行済株式総数に対する割合

また、「大株主の状況」は中間決算後に発表される半期報告書にも載っています。

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【個人】保有企業数の多い『多株主』ランキング

このパートでは保有企業の数が多い個人の『多株主』を保有企業数の多い順で紹介します。

『多株主』となるような大物個人株主の動向は市場も注目していますが、個人投資家はほとんど表舞台には出てこないため、詳しい経歴は分かっていません。

順位 株主名 保有金額 保有企業数 銘柄
1 内藤征吾 33億円 22社 ディーエムエス、藤田エンジニアリング、遠藤製作所 他
2 水元公仁 37億円 19社 神田通信機、共同印刷、サクサホールディングス 他
3 五味大輔 266億円 18社 そーせいグループ、LIFULL、オイシックス 他
4 吉岡裕之 44億円 17社 チャーム・ケア・コーポレーション、USEN-NEXT HOLDINGS 他
5 吉田和弘 37億円 17社 岩井コスモホールディングス、スペースバリューホールディングス、弘電社 他
6 山下良久 13億円 14社 オークファン、ファーストロジック、CEホールディングス 他
7 若杉精三郎 7億円 13社 丸千代山岡家、ジョルダン、ティーライフ 他
8 重田康光 707億円 12社 光通信、ジャストシステム、大崎電気工業 他
9 岩崎泰次 44億円 12社 世紀東急工業、フェローテックホールディングス、不動テトラ 他
10 山内正義 38億円 11社 東京計器、飛島建設、宮地エンジニアリンググループ 他

1位の内藤征吾氏は証券業界では有名な人物で、内藤氏が大量保有する銘柄は「内藤銘柄」
とも呼ばれています。内藤銘柄は信頼できると評判が高く、銘柄選定基準の一つにもなっています。

3位の五味大輔氏は、本業を持ちながら投資家としても活動している兼業投資家として有名です。

そーせいグループの筆頭株主になっており、新興市場の株を現物で買って長期保有するのが投資のスタイルです。中学生のときに100万円を元手に投資を始め、2021年時点では資産を250億円超にも増やしたとも言われています。

【法人】保有時価総額で見る大株主ランキング

このパートでは保有時価総額の大きい日本の法人大株主を保有金額の順に紹介します。

順位 株主名 保有金額 保有企業数 銘柄
1 財務省(財務大臣) 7兆8,229億円 3社 JT、日本郵政、NTT 他
2 日本生命保険 7兆3,282億円 514社 マルハニチロ、ホクト、コムシス 他
3 トヨタ自動車 6兆1,465億円 50社 トヨタ紡織、協和レ、ALBERT 他
4 ステート・ストリート・バンク・ウエスト・トリーティ 6兆842億円 260社 日水、ウエストHD、ミライトワン 他
5 SSBTCクライアント・オムニバス 5兆7,304億円 224社 ショーボンド、石油資源、長谷工 他
6 JPモルガン・チェース・バンク 4兆1,860億円 125社 INPEX、住友電設、ITメディア 他
7 日本郵政 3兆8,614億円 4社 楽天グループ、かんぽ生命、ゆうちょ銀 他
8 ロシュ・ホールディング(スイス) 3兆7,984億円 1社 中外製薬
9 豊田自動織機 3兆2,287億円 15社 トヨタ紡織、イビデン、愛知鋼 他
10 明治安田生命保険 3兆1,198億円 299社 ショーボンド、技研HD、コムシスHD 他

生命保険会社の株式保有額が多いのはなぜ?

日本の大株主ランキングでは2位に日本生命保険、10位に明治安田生命保険がそれぞれランクインしています。

生命保険会社の株式保有額が大きいのは、顧客から預かった保険の契約金を運用して、保険金支払いに充てているためです。

生命保険業界全体の資産合計は2013年末で350兆円を超えるとも言われ、日本の株式市場においては見過ごすことのできない大プレイヤーです。

各生命保険会社では公式HPで資産運用の状況を報告しており、運用のポートフォリオなどをチェックすることができます。

ロシュ・ホールディングとは?

8位にランクインしているロシュ・ホールディングはたった1社、中外製薬の株式だけを3兆円以上保有しています。一体何者なのでしょうか?

ロシュ・ホールディングはスイスを本拠地に置く世界有数の製薬企業です。1896年に設立され、医薬品事業を主軸に世界150カ国以上に展開しています。

中外製薬は2002年にロシュ・ホールディングと資本業務提携を実施。ロシュ社が中外製薬の株式の過半数を取得し、中外製薬はロシュ・グループの一員となりました。

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【法人】保有社数で見る大株主ランキング(2022年10月現在)

このパートでは保有社数の多い日本の法人大株主を保有企業数の順に紹介します。

順位 株主名 保有金額 保有企業数 銘柄
1 三菱UFJ銀行 23兆,339億円 583社 ショーボンド、日鉄鉱、東急建設 他
2 日本生命保険 73兆2,821億円 514社 マルハニチロ、ホクト、コムシスHD 他
3 みずほ銀行 1兆,9936億円 442社 日水、マルハニチロ、サカタタネ 他
4 SBI証券 832億円 440社 フィット、FJ、KHC 他
5 三井住友銀行 1兆8,581億円 413社 サカタタネ、住石HD、日鉄鉱 他
6 楽天証券 400億円 352社 ホーブ、JESCO、ロボホーム 他
7 明治安田生命保険 3兆円1,198億円 299社 ショーボンド、技研HD、コムシスHD 他
8 ステート・ストリート・バンク・ウエスト・トリーティ 6兆842億円 260社 日水、ウエストHD、ミライトワン 他
9 SSBTCクライアント・オムニバス 5兆7,304億円 224社 ショーボンド、石油資源、長谷工 他
10 第一生命保険 1兆8,393億円 220社 ショーボンド、清水建、大豊建 他

銀行や証券会社の株式保有数が多いのはなぜ?

1位の三菱UFJ銀行に始まり、3位・5位に大手銀行、4位・6位には証券会社がランクインしています。

金融機関が多くの企業の株式を大量に保有しているのは、政策保有(株式持ち合い)によるところが大きいと言えます。

政策保有とは取引関係にある企業同士がお互いの関係維持や他企業からの買収を防衛するため、支配権を伴わない程度に株式を保有し合うという日本特有の商習慣です。

日本に広まったのは1960年代頃と言われています。当時は日本企業が外資によって強制的に買収されるケースが多く、その対抗策として利用されていました。

しかし、コーポレートガバナンスコード(企業統治)の意識の高まりから政策保有企業は「物言わない株主」と批判されるようになり、金融庁主導のもと2015年より金融機関の政策保有株削減が進められています。

また、政策保有のほかに金融機関が株式を保有している理由として、投資運用目的も挙げられます。金利低下の影響により、本業以外の収益を確保する必要があり、運用を行っているというケースです。

ステート・ストリート・バンクとは?

8位のステートストリートバンクは大手機関投資家向けの資産運用機関です。主に大手機関投資家および各国政府と取引を行っています。世界最大級の金融機関で、現存する銀行としては米国国内で2番目に古い歴史を持っています。

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大株主が企業に与える影響とは?

このパートでは大株主の動向が企業に与えた影響について事例を参照して紹介します。

事例①ダルトン・インベストメンツと新生銀行

ダルトン・インベストメンツは1999年に創業し、これまで日本株に積極的に投資を行ってきた老舗アクティビストです。

積極的に株主提案をしてきたことから、一部では「ハゲタカファンド」の印象を持つ人もいます。

2019年に提出した株主提案で、ダルトン・インベストメンツは新生銀行に対して共同創業者のジェイミー・ローゼンワルド氏を役員報酬1円で社外取締役に選任することを提案、また、少なくとも毎年度、純利益の90%を自社株買いに充てることなどを文書で求めました。

ダルトン・インベストメンツの提案のうち、社外取締役の選任に関しては株主総会で否決されてしまいましたが、翌2020年5月に新生銀行は200億円を上限とした自社株買いを発表しています。

事例②エフィッシモキャピタルマネジメントと川崎汽船

エフィッシモ・キャピタル・マネージメントは、旧村上ファンドの元社員3人が設立したアクティビストファンドです。

2015年に6%以上の株式を保有して川崎汽船の大株主となり、2016年3月末には3割弱を保有する筆頭株主となっています。

2016年の株主総会では当時社長を務めていた村上英三会長の役員選任議案に反対票を投じるなど、対立姿勢を強めていました。

川崎汽船の総株式の3割をも保有するエフィッシモの提案を断るのは難しく、2019年には川崎汽船がエフィッシモから内田龍平氏を社外取締役として受け入れる役員選任案を発表しています。

事例③レノとレオパレス

レノは旧村上ファンドの流れを汲む投資ファンドです。

2020年2月にはレオパレスの総株式数の16.77%を保有する大株主となりました。

レノは2020年2月、レオパレスに臨時株主総会の開催を求めると、村上氏の側近とされる大村将裕氏を取締役に選任するよう株主提案を行いました。提案に賛成したのは議決権を有する株主の44%にとどまり、議案は否決されています。

その後、2020年7月には大量保有報告書によりレノによるレオパレス株の売却が判明。

同年6月には大株主の村上世彰氏がレオパレスに対する数百億円規模の増資を引き受けると報じられたことで一時株価は10%以上値上がりしていましたが、実際はレノなど旧村上ファンド系投資会社3社が共同保有するレオパレス株は売却されていました。

増資期待の後退に加えて、「レノの売却」がレオパレス株の売り材料として株価下落に拍車をかけました。

大株主の動向チェックにはIR-naviの活用がおすすめ

大株主は単なる株主ではなく、その動向が上場企業の経営方針を左右し、保有する株式数や金額に比例して市場や株価にも大きな影響を及ぼします。

株主総会での権利行使はもちろん、株式の保有・売買の状況が公開されることで株価が動き、一般の投資家の投資動向を変えることもあるでしょう。そのため、上場企業は自社の大株主の動向を随時チェックしておく必要があります。

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