株式会社は誰のものか?会社と株主の関係や、株主の権利について解説

株式・投資

昨今、「もの言う株主(アクティビストファンド)」が注目されるようになり、その影響力は度外視できなくなりました。株主の思想・スタンスや投資手法、保有比率は会社にとって重要であることは間違いありません。

では、株主は株式会社に対してどんな権利を持っていて、両者はどのような力関係にあるのでしょうか?

本記事では株式会社とは何か、株主とは何か、株式会社と株主の関係を解説。株式会社と株主にまつわるよくある質問にも答えます。

「株主は会社にとってどんな存在なのか?」「株式会社と株主の力関係はどちがら上なのか?」と疑問に思っているならぜひチェックしてください。

株式会社とは?

株式会社とは設立にあたって株式を発行し、その株式と引き換えに調達した資金を使って運営する会社のことを言います。

出資を募り 事業を行う

株式会社の起源は、1602年にオランダで設立された東インド会社だと言われています。

この時期は大航海時代と呼ばれ、ヨーロッパ諸国は船で航海をしてアジアから香辛料や香料などを輸入していました。当時は香辛料が大変貴重でした。

航海で無事アジアにたどり着き、ヨーロッパに香辛料を持って帰れれば莫大な利益となりましたが、船を作るには巨額の資金が必要で、また、航海の途中で船が難破したり、海賊に襲われたりと、航海には大きなリスクがつきものでした。

そこで、株式を発行して多くの人から集めた資金を船の建造費や航海中の費用、香辛料の買付代金に充て、もし航海が失敗しても一人当たりの損失は小さくなるようにしたのが、今の株式会社の仕組みです。

この仕組みのもとでは、株主は出資した金額以上に損をすることはなく、得た利益は出資額に応じて分配されました。

より多くの資金を集めるために上場する

より多くの株主にアプローチして資金を集めるため、株式市場に上場する株式会社もあります。

株式市場で調達した資金は借入金と違い、基本的には返済の必要がない自己資本です。株式市場で広く資金を募ることは、会社の健全な経営にも繋がります。

また、上場によって会社の知名度はもちろんのこと、銀行からの信用力も高まります。

借り入れや債券発行など、非上場の時に比べて銀行からの資金調達がしやすくなる点も上場のメリットと言えるでしょう。

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株主とは?

株主とは、株式会社への出資と引き換えに株式を保有する人のことを言います。

株主になるということは、会社の持ち主の一人になるということです。所有する株式数の割合に応じて会社に対し様々な権利を持つことになります。

株主の権利とは

では、具体的に株主が持つ権利とは何でしょうか?
このパートでは大きく分けて3つを紹介します。

利益配当請求権

株式会社がその事業の運営によって利益を得たときに、株主はその一部を分配金として受け取れる権利があります。

<残余財産分配請求権>
廃業や倒産・清算などで株式会社が解散する際、負債を返済して残った財産があるときは、保有株数に応じて株主は財産の分配を受けられます。

<経営参加権>
会社の経営に間接的に参加できる権利です。株主総会に出席して経営に関する重要な決議に投票したり、意見を述べたりできます。

株主の分類

株主は出資額やその属性、目的に応じていくつかに分類できます。このパートでは大きく4つに分類して紹介します。

大株主

大株主とは会社の株式を大量に保有しており、保有株の比率が高い株主を指します。個人・法人は問いません。

動向が企業経営や株価に大きな影響を与えることもあるため、会社や他の株主にとってもその存在は無視できないものです。

具体的に何%以上の株保有で大株主になるといった基準はありません。上位株主の保有比率は企業のHPや『四季報』などで調べることができます。

個人株主

法人株主や機関投資家以外の一般投資家を指します。

2021年の日本証券業協会の調査によると、株式市場全体に占める個人株主の割合は金額ベースで16.8%となっています。

近年では、個人投資家を増やすために会社が株主優待制度を導入したり、証券取引所では最低取引単位の引き下げなど様々な工夫をしています。

参考URL:日本証券業協会「個人株主の動向について」

法人株主

株式会社の株主となっている法人を法人株主と呼びます。

株式会社の親会社や金融機関、取引先などが法人株主となっている例が多いです。

法人株主が株式を保有するのは、貸付先や取引先との関係の維持・強化が目的であることが多いため、個人株主と比べて大口の安定株主となりやすいのが特徴です。

機関投資家

投資で利益を得る大口の法人投資家を指します。

具体的には信託銀行・生命保険会社・投資顧問会社・年金基金などの団体がこれにあたります。大量の資金を使って運用するため、一回当たりの売買金額が大きく市場に与える影響も大きいのが特徴です。

比較的長期の運用を行う投資スタイルで、通常、ヘッジファンドなどの短期的な法人投資家とは区別されます。

このように株主にはさまざまな種類があり、それぞれの特徴を踏まえた上でのコンタクトやコミュニケーションが欠かせません。株主管理にお悩みであれば、以下のサービスがおすすめです。

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株主と株式会社の関係

出資により株主は株式会社の所有者となります

そのため、直接会社を運営する社長や取締役よりも上の立場で会社の経営に参加でき、会社の運営が上手くいっていなければ、社長や取締役を解任したり、新たに別の人材を選任したりすることもできます。

株式会社の経営方針や意思決定に際して、株主は決して無視することのできない重要な存在なのです。

株式の保有比率による権利

このパートでは株式の保有比率によって株主が得る権利について説明します。

2/3以上

2/3以上の持株比率があれば、株主は一人で特別決議を行うことができます

特別決議で扱うのは、経営上重要度の高い定款変更や取締役の解任、会社の合併や解散、事業譲渡に関する事項です。この特別決議を単独で決定できるとなると、会社の経営に及ぼす影響は相当なものになるでしょう。

経営の安定化を図るため、持株比率2/3はできるだけ創業メンバーや、信頼できる安定株主で確保しておく必要があると言われています。

1/2以上

1/2以上の持株比率があれば、株主は一人で普通決議を行うことができます

普通決議で扱うのは、役員の選任・解任、役員報酬の変更、剰余金の配当、資本金の増加等に関する事項です。

会社の基本的な事項を単独で決定できますので、これもまた会社にとって影響の大きい権利と言えるでしょう。

1/3以上

1/3以上の持株比率があれば、株主は一人で特別決議を阻止することができます

特別決議の可決には2/3以上の株主の賛成が必要ですので、1/3以上の株式を保有していれば、仮に特別決議が提出されたとしてもそれを拒否することが可能です。

決議を通すことこそできませんが、特別決議を拒否できる権利は会社経営上、重要な意味を持ちます。

3%以上

持株比率が3%以上なら、株主総会を招集したり、役員解任・会計帳簿閲覧などの請求権があります。

株主は株主総会で決議したい事柄がある場合に招集をかけたり、会計帳簿で経営の実態をチェックできるため、会社にも緊張感を持った事業運営が求められるでしょう。

1%以上

持株比率が1%以上なら、株主提案権が生まれます。

株主提案権とは株主総会において議案を提出できる権利で、企業経営に対する問題提起のきっかけになることも。1%とはいえ、会社の経営に一石を投じられるという意味では、株主提案権もまた重要な権利です。

少数株主の権利

少数株主権とは、1%や3%といった一定数の株式を保有している株主に認められた権利のことを言います。

株主は保有している株式数に応じて、その会社の経営に参加できる権利を持っています。株主総会の決議は基本的に多数決で決まりますので、会社法上、株式(議決権)をより多く保有する大株主の意向が優先されやすくなります。

少数株主権はこうした大株主優位の議決や経営陣の行き過ぎを防止するために、少数の株しか保有していない株主にも異議申し立てができる権利を保障したものです。

1%以上保有ならば株主提案権、3%以上保有ならば会計帳簿閲覧権や株主総会招集請求権があり、これを保障することは株主全体の利益にも繋がります。

所有と経営の分離

株式会社は会社の所有者と経営者を分けています。

法律上、会社の所有者は資金を出資した株主です。経営者は株主から会社経営を委託されているだけであり、会社の持ち主ではありません。

なぜなら、資金を出資する株主が必ずしも優れた経営者とは限らないため、所有者と経営者を分けることで経営能力の高い人材に事業運営を任せ、効率的な会社経営を実現できるのです。

この考え方を「所有と経営の分離」と言います。

株主有限責任

株主は、出資した資金の範囲内で責任を負います。

これを株主有限責任と言います。株式会社が負債を抱えて清算となった場合、負債を返済した後の財産が株主の持株比率に応じて分配されます。会社が清算しても、株主が賠償責任や従業員の給与、仕入代金の支払いといった負担をすることはありません。

有限責任の原則によって株主の責任が出資額の範囲内に限定されていることで、株主の出資を容易にし、会社が資本金を集めやすくする狙いがあります。

出資比率によって、会社の経営について様々な影響力をもつ株主とは、日頃から良好な関係を築くことが大切です。『IR-navi』なら、国内外の個人投資家や国内の機関投資家の情報を一元管理でき、株主との円滑で効果的なコミュニケーションを促進できます。

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株式会社は誰のもの?

では、株式会社は株主だけのものなのでしょうか?

ここでは会社のステークホルダー(利害関係者)にも目を向け、「株式会社の持ち主」について考えます。

株主主権とステークホルダー主権

会社は株主のためにあり、株主の所有するものだという考え方を「株主主権」と言います。

それに対し、会社は従業員や消費者、取引先など会社に関わる全てのステークホルダー(利害関係者)のためにあるという考え方を「ステークホルダー主権」と言います。

これまで日本では「ステークホルダー主権」の考え方が主流で、従業員の給料を上げたり、消費者や取引先のために商品を安く提供するといったステークホルダー向けの施策を積極的に行ってきました。

しかし、近年になって利益を上げにくくなってきた日本の企業は、ヨーロッパやアメリカの企業のように資金をできるだけ効率良く活用して会社を成長させ、高い利益を追求する「株主主権」にシフトしてきています。

もちろん、会社の成長や増収増益は株主にとって魅力的なものですが、短期的な利益を優先させる会社経営は、従業員の過労死を引き起こしたり、環境を破壊してしまうなど社会的な問題にも繋がりかねません。

株主とステークホルダーのどちらも大切にし、どちらからみても魅力的な会社を目指すのが株式会社の理想的な姿と言えるでしょう。

アクティビストファンド(物言う株主)とは?

アクティビストファンドとは一定数以上の株式保有を背景に、会社の経営方針に対する提案を行ったり株主還元を要求したりする投資ファンドのことです。

日本では「物言う株主」とも呼ばれ、近年その発言力や影響力の大きさに注目が集まっています

ここでは、アクティビストファンドの動向と会社に与える影響について具体例を挙げて解説します。

ネクスタによるゼネラル・オイスターへの事業内容変更の提案

オイスターバー(牡蠣料理専門店)を全国展開するゼネラル・オイスターに対し、筆頭株主であるネクスタが事業内容の変更を迫りました。

コロナウイルス感染拡大により、ゼネラル・オイスターは2021年3月期に債務超過へと転落。これを受けて2022年1月、ネクスタと阪和興業に対して第三者割当増資を行い、債務超過を解消しました。

ネクスタは投資ファンドからの株式の譲受と、増資によってゼネラル・オイスターの筆頭株主になりました。

すると、同年4月にネクスタはゼネラル・オイスターに対し、業績低迷を理由に士業向けアフィリエイト広告事業や太陽光発電所の権利売買事業へと、事業内容を変更するよう迫ります。

一時は事業内容の変更について株主提案権の行使を示唆していたネクスタでしたが、ゼネラル・オイスター側との妥協点を見出し、株主提案は取り下げられました。

サン電子に経営陣刷新を求めたオアシス

オアシス・マネジメント・カンパニーは香港を拠点に世界各国に投資しているアクティビストファンドです。

過去にはアルプス電気とアルパインの経営統合や片倉工業への株主提案で話題となりました。

オアシスはサン電子が2期連続で営業赤字を計上し、2020年3月期も赤字の見通しであることから、2020年4月8日開催の株主総会で山口正則元社長ら4人の取締役解任とオアシスが推薦する5人の取締役の選任を求める株主提案を提出。

この株主提案は過半数の賛成を獲得して可決されました。

これはオアシスが日本で株主提案を通した初の事例で、今後オアシスはこれまで以上にサン電子の経営に深く関与すると見られています。

株式会社と株主よくあるQ&A

このパートでは、株式会社と株主についてよくある質問を取り上げます。

株式会社設立に必要な人数は?

株式会社は1人でも設立できます。会社のオーナーである株主と経営者を兼任する形です。

ただその場合、出資者が1人になるため資本金が少額になったり、取締役がいないことで社会的な信用度が低くなったりしやすいデメリットがあります。

株式会社の株主は社長1人でもいい?

株主が社長1人となっても問題ありません

会社の所有者である株主と経営者である社長が同一なら、会社の経営判断を全て1人で行えるため、スピード感のある経営が可能です。

その反面、経営に関する全てのリスクを1人で背負うことになりますので、資金繰りが厳しくなると、社長個人の資産を会社に貸し付けたり、保証人となって資金調達を行う必要が出てきます。

株主総会開催は義務?なしでもいい?

株主全員の同意があれば、株主総会の開催を省略できます

提案された議案について、書面などで株主全員の同意を得ていれば、可決の決議があったと見なされます。

同意書面や電磁的記録を残しておけば議事録の作成も必要ありません。少数の株主で構成されている会社では有用な方法です。

株主総会と取締役会の違いは?

株主総会は株主が、取締役会は取締役が参加する会議です。どちらも会社の重要事項を決定する場であることは同じですが、決議できる事項は少し異なります。

株主総会で決議される事項は、以下の通りです。

  • 定款の変更
  • 会社の解散・合併・譲渡
  • 取締役の選任・解任
  • 剰余金の配当

いずれも会社の組織や経営の方針が大きく変わるような事項です。

これに対し、取締役会では以下のような事項を決議します。

  • 経営戦略
  • 業務執行の監督
  • 支店や組織の設置・変更・廃止
  • 株主総会の招集
  • 計算書類や事業報告の証人

取締役会は株主総会のように大きな議題ではなく、日々の業務に必要な事項を決定するための場です。

株主を調べる方法は?

会社の株主を知ることのできる書類には以下の3つがあります。

  1. 会社で保管している「株主名簿」
  2. 同じく会社で保管している「確定申告書の別表二」
  3. 法務局で発行している「実質的支配者リスト」

株式会社にとって株主は重要な存在

株主は、個人・法人を問わず出資によって株式会社を保有し、会社の重大な経営方針を決定します。

株主との良好な関係を保ちつつ、安定した経営を続けるためには、株主を管理・把握しその動向を掴んでおくことが大事です。

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