株式会社フォーカスシステムズ代表取締役社長森啓一氏2/3

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会社名  : 株式会社フォーカスシステムズ
証券コード: 東証第一部 4662
代表者  : 代表取締役社長 森 啓一(もり けいいち)
略歴   : 1989年に慶応義塾大学商学部を卒業後、監査法人トーマツを経て、1998年にフォーカスシステムズ入社。2006年取締役、2009年常務に就任。2011年4月1日社長就任。
所在地  : 東京都品川区東五反田2丁目7番8号フォーカス五反田ビル
設立   : 1977年4月1日
事業   : システムインテグレーション(SI)、ITサービス、情報セキュリティの3事業を中心に各種コンピュータ関連事業を展開
資本金  : 29億円(2018年3月末現在)
URL  :https://www.focus-s.com/

フォーカスシステムズは「テクノロジーに、ハートを込めて。」というコーポレートスローガンのもと、人と人とを技術でつなぐことを事業への取り組み姿勢として創業より40年以上、各種コンピュータ関連事業を展開しています。システムインテグレーション(SI)事業、ITサービス事業、そして情報セキュリティ事業の3本柱によるトータルソリューションを主に提供しており、独自に蓄積されたノウハウを基に最先端技術を取り入れ、常に新しいソリューションの創造と新規分野への積極的な参入によって、さまざまなシーンで社会と人を支える技術を磨き続けています。

経営戦略について

杉本:御社は財務安定性が非常に素晴らしいのですね。社長は財務経理のご出身ということもあるのかもしれないですが、今回、実質無借金になったと。素晴らしいことです。一方、今の低金利でもっとお金を借りてどんどん挑戦すべきだという見方もあります。経理財務戦略のポリシーをお伺いします。

森:新株予約権発行により取得した資金は、その際に掲げた使途・目的に沿って使用してまいりますが、財務バランスに意を払い、かつ投資する案件の吟味は慎重に行ってまいりたいと考えています。当然、ROEなどの観点からは低金利のうちに借金をしたほうがよいという議論もありますが、それにも限度があると思います。やはり私としては、現預金と借金は最低でもイコールのレベルにしたい思いもあります。過去、非常に厳しい局面がありましたので、そこは少なくともプラマイゼロ。むしろ、キャッシュを若干増やした形で安定させておきたいです。一方、銀行の借金をゼロにすることは特に考えていないです。借りる必要がないならばあえて借りる必要はない、という考え方がやっと会社の中で言えるようになってきたのが現実です。キャッシュの使途は、株主や当事者の皆さんでしたら気にするところと思います。4本目の柱となる新規事業の育成や、1,2本目の既存事業を支える社員教育などに効率的に投資する考えです。

杉本:既存3事業は事業運営のコツをすでに体得しており、かつリピート性があるビジネスのため、成長スピードや収支なども見通し易いものと思います。そうであれば、勝負を掛けるのは4本目の新たな分野ということになりますね。

森:新規事業の勝負の仕方として、例えば、ゼロから会社を立ち上げるのか、他社をM&Aで取り込んでいくのか、といろいろあります。いざM&Aとなったときには、当然、多額のキャッシュが必要になりますから、キャッシュをそういうのに使うのが一つです。一方、1本目と2本目の既存事業には、人が足らない状況にあり、人を入れるという戦略もありますが、やはり一人一人の生産性を上げることも大切と思います。例えば、これまで10人でやっていた仕事を、8人では出来ないのか。それを実現するためには、一人一人の能力を上げるための教育も含めた対応が必要になると感じています。当然、4本目の新規事業へ一気に投資するのが一番わかりやすいとは思いますが。

杉本:今人材の話になったので、人材のところにフォーカスしたいのですが。昨今のエンジニア不足解消のために、東南アジアにラボを持つとか、優秀なエンジニアを海外に移して開発するなどの取り組みが増加しつつありますが、いかがお考えですか?

森:今、生産性人口は減っている、減っていると言いながら、まだ実際には減っていません。しかしながら、世の中では人が足りないと言われているのはなぜかという疑問が有ります。これに対しては、単純な人数の話ではなく、必要とされる人材の能力が厳しく問われている時代になってきたのだと理解しています。今までは、対象スキルを有していれば良かった時代から、スキルを有しつつも実際の実行力と実績を複数分野で有している人しか駄目という時代になったときには、当然条件に合致する人材が足りなくなる。というのが、今起きているのではないかと。それでは、それを補うために海外の人材を使うのは、一つの選択です。ただ、海外の人材を入れたときに、語学、慣習、文化の問題もあり、管理コストはやはり日本人と違うと思います。その管理コストもプラスして見たときに、本当に得だろうかという疑問が私の中でもあるし、現場でもあると思います。そこが、もう少しきちんと分析されないと、積極的に海外の人材を取り入れるという形にはならないと思います。いま東南アジア諸国は人口増が続いています。そうしたときに、例えば、今後10年後、20年後、東南アジア諸国が優秀なIT技術者が欲しいと逆に言ってくる可能性があります。日本人の技術はきめ細かいし、やはり、他の国にはない繊細さを持っているので、たぶん引く手あまただと思うのです。そうすると、今は日本がそういった国に仕事を出していますが、そういった国が日本に仕事を出すという逆の流れが起きてくる可能性があると思います。日本人の良さがどこで発揮できるのか見極めて、人材に関しては採用も教育も含めて取り組む必要があると思います。安いからと言って安易に入っていこうとは思いません。

杉本:今社員の質というか、優秀なエンジニアというワードがあったのですが、NTTデータや日本IBMの仕事を受けようと考えたら、当然、高い技術レベルが要求されるものと思います。日本において優秀な人材は取り合いで、そもそも絶対数が不足しており、給与を高額にしても採用出来るか分からない状況です。その状況の中でこれだけ優秀な人材を確保出来ているわけです。どのような採用戦略があるのですか?

森:採用する人材の質は決して下げないという強いポリシーで人事が一貫して取り組んでいるのが一つあります。人材の質というのは、能力うんぬんよりも、その人のコミュニケーション能力であったり、人間性であったり、そういった観点を重要視して採用しています。もう一つは、NTTデータさんや日本IBMさんなどの優秀なパートナーと、質の高い仕事をやれるという環境の中で、切磋琢磨して、鍛えられているというのが一番大きいのではないかと思います。

杉本:パートナーがNTTデータとか日本IBMだと、おのずとレベルは上がっていきますよね。そういうところで鍛えられていると。

森:入社時の能力は他社さんとさほど変わらないと感じていますが、その後の環境による成長が大きいと思います。

杉本:社員のロイヤリティを高めるための施策はありますか?評価体制が他の会社と違うとか、福利厚生がいいとか。

森:弊社はコンピテンシー評価を導入しています。その人の能力によって、本人がどれくらいできるようになったのか、それに対して、上司があなたはこうですねというのを出したうえで、それを突き合わせて、あなたはここが足らないよねとか、ここは満たしているよねという形で、それで等級とかが決まってくるというのが評価制度です。あと福利厚生としては、ここ2、3年では部活動を奨励しています。10名以上集まって申請を出し、年間何回以上の活動をして報告をすると会社から補助金を出します。

杉本:その評価結果はどのように給与に反映されるのですか?

森:給与は他社と比較して高いとか安いとか、そういうのはないと思います。当然、大企業を見たら、隣の芝が青々としているイメージを社員は持つかもしれません。しかし、そういうところと仕事をしていても、誘いがあっても、転職せずに弊社に在籍してくれるというのは、それなりにやりがいのある仕事を提供出来ているのではないかと思います。弊社の特徴の一つですが、下に任せて権限をどんどん下ろしていく企業文化があります。下が非常に責任感を持って仕事をしなきゃいけないので、本人が本当にやる気があって、前向きだったら、非常にやりがいがあります。

杉本:成長していけるということですね。

森:そういった権限委譲は、他社に比べても顕著だなと感じます。

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(インタビュー日 2018/8/21)

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