投資家が注目するESGとは。CSRやSDGsとの違いや企業事例を解説

ESG

社会問題や環境問題の取り組みを果たす企業に投資が行われるESG投資は、長期的に企業が成長するための必要不可欠な持続可能性が求められています。世界的にも潮流なESG投資では、今後「環境」「社会」「ガバナンス」に配慮しなければ、企業価値が高まらない時代になりつつあります。

最近ではSDGsと言われる、「2030年までに持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現する」国際的な目標が有名です。ではESGはSDGsなどと比べて何が違うのでしょうか。

今回は投資家が企業価値の指標とするESGの概要や、CSRやSDGsとの違いなどを企業事例を交えながら詳しく解説します。

ESGとは

ESGとは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の頭文字をとって付けられた言葉です。ESGは環境や社会問題に対しての取り組みを示す指針で、財務諸表だけでは見えない企業の総合的な評価をするために重要な役割を担っています。

近年はCO2の削減や女性の社会進出支援、情報開示など、企業の在り方が問われる時代になりました。つまり、長期的な成長においてESGの観点は不可欠な要素であり、それを配慮していない企業の成長は魅力を失うということです。

当初は機関投資家が注目し始めて広まったESGは、個人投資家も投資する上で欠かせない観点です。環境問題や労働環境の変化などから、長期的に企業が成長するためには持続可能性が求められています。

投資家が注目するESG投資

実際に2015年の調査では世界中のESG投資額は23兆ドルでしたが、2017年の調査では34%増の31兆ドルと急激に伸びています。日本だけで見てみても前回の調査から360%増の232兆円です。

出典:大和総研 世界全体のESG投資残高は31兆ドルに

この大きな背景にあるのは機関投資家の投資判断にESGが深く関わるようになったことが挙げられます。ESG投資は世界中の投資家が注目し始めており、投資額は年々増加しているため一時的なトレンドである可能性は低いでしょう。それはヨーロッパが2035年にガソリン車の販売を禁止すると公言していることからも明らかです。

電気自動車の騎手であるテスラ社の株価が上昇している通り、ESGへの配慮は企業の成長戦略や出資を集める有効な手段となりつつあります。自社の企業価値を向上させるには、持続可能なプロジェクトへの投資促進を積極的に行う必要があるでしょう。

 

EGS投資7つの手法

一口にESG投資といっても、様々な種類があります。そのため、企業側は投資家がどのような観点を重視してESG投資を行っているのかを見極め、取り組みを強化することが大切です。

以下では、ESG投資で主に用いられる7つの手法について解説します。

1)ネガティブスクリーニング

ネガティブスクリーニングとは、ESGに適さないと判断される投資対象を除外する手法です。

例えば、ギャンブル、たばこ、武器、化石燃料、アルコールなど人道的見地から生命に重大な影響がある投資対象を指します。カジノホテルを運営するラスベガス・サンズ、タバコメーカーのブリティッシュ・アメリカン・タバコ、軍事関連企業のロッキード・マーティン、エネルギー企業のエクソン・モービル、アルコール飲料企業のディアジオなどが挙げられます。

これらの投資銘柄は別名で「罪ある株」と言われ、論理的観点や宗教的観点に基づき、ESG投資の対象から排除する投資方法です。

2)ESGインテグレーション

ESGインテグレーションとは、企業の財務諸表だけを見て投資判断するのではなく、ESG情報である、環境、社会、ガバナンスも含めて評価し投資対象を選定する手法です。持続可能なプロジェクトへの投資促進、労働環境の変化に伴う改革、気候変動問題や人権問題に積極的に携わっているか否かなどを判断材料にする投資方法です。

例えば、女性の活躍だけではなく、外国籍社員やLGBTへの配慮をしている資生堂では、社員が仕事と育児を両立できるよう、保育料の補助や有給として認められる子供の看護休暇制度などを整備しています。

3)議決権・エンゲージメント(投資家行動)

議決権・エンゲージメントとは、投資家と企業とが対話を通じてESGへの取り組みを促し、企業価値向上を図ることを目的とした手法です。

例えば、製薬会社では貧困地域の医薬品へのアクセスを改善することが求められ、企業がどの程度取り組んでいるのかを把握するAccess to Medicineと呼ばれる指標があります。この指標のランキングが低かったアステラス製薬会社、武田薬品工業株式会社、エーザイ株式会社、第一三共株式会社は投資家との対話(エンゲージメント)を行うことで企業価値の向上に成功しました。

対話などのコミュニケーションだけではなく、議決権行使を通じて株主提案なども含まれ、ESG投資では積極的なエンゲージメントが行われています。

4)国際規範に基づくスクリーニング

国際規範に基づくスクリーニングとは、OECD多国籍企業のガイドラインや国際グローバルコンパクトなど、国際的に認められている規範への対応が不十分な企業を投資対象から除外する手法です。

ESG投資対象外とは、労働環境問題や人権問題、気候変動や環境問題などの社会課題に対して最低基準を満たしていない企業をスクリーニングにかけて、投資対象から外す投資方法です。

例えば、1999年にコフィー・アナン事務総長が提唱し、2000年に発足した人権、労働権、環境、腐敗防止に関する10原則を順守し実践するように企業に要請した「国連グローバル・コンパクト」などが挙げられます。

5)ポジティブスクリーニング

ポジティブスクリーニングとは、ESG課題への積極的な取り組みの評価が高い業界や企業に投資を行う手法です。

例えば、保険会社を中心とした企業を傘下に持つSONPOホールディングス株式会社では、気候変動による自然災害は保険金支払いの増加などで事業に大きな影響を受けると考え、率先して環境負荷への削減に取り組んでいます。その他にも、大手電気機器メーカーのオムロン株式会社は、温室効果ガス排出ゼロを目指すなどの環境取り組みの先進企業として有名です。

また、各業種内からESG評価の高い企業を選定して投資する方法を「ベスト・イン・クラス」と呼びます。ちなみに「ポジティブスクリーニング」と「ベスト・イン・クラス」は名称は違えど言葉の意味は同じです。

6)サステナブル・テーマ投資

サステナブル・テーマ投資とは、持続可能性にフォーカスした長期的な投資戦略の一つで、持続性と関連する資産に対して投資する手法です。

例えば、グリーンテクノロジーやグリーンエネルギー、電気自動車や省エネルギーに繋がる製品作りなど、主に非財務情報を踏まえた部分で評価します。

7)インパクト/ コミュニティ投資

インパクト/ コミュニティ投資とは、社会課題や環境問題を解決すると同時に、投資リターンを生み出すことが目的のESG投資方法の一つです。

例えば、貧困問題、食料問題、気候問題などのSDGsに代表される問題に着手する企業が、長期的に価値を与える影響に対して投資するものです。

CSRやSDGsとの違いや関連性

ESGと似た意味をもつ言葉にCSRSDGsがあります。CSRは企業の社会的責任を意味し、SDGsは持続可能で多様性のある社会を実現させることを目標とし、お互いに社会課題に関して関連性の深いキーワードです。

以下では、ESGとCRSやSDGsとの違いについて、もう少し掘り下げて行きます。

ESGとCSRの違い

CSRとは「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとって付けられた言葉で、日本語の意味は(企業の社会的責任)とされ、環境や社会に対して責任を持つという考え方のことを言います。

企業は投資家に向けて情報開示や顧客満足度、顧客サービスなど、信頼を獲得するために利益を上げることが第一優先でしたが、近年は社会的責任が評価される大きなポイントになってきました。株主やユーザーに品質の高いサービスや商品を提供することは当然であり、それにプラスアルファという形で、社会問題や環境問題に配慮している企業であるかどうかが問われています。

つまり、CSRは「企業側の視点」で社会的責任を果たすための事業を行うことを意味し、ESGは「投資家の視点」でその社会的責任を果たしている企業に投資をするという違いがあります。

ESGとSDGsの違い

SDGsとは「Sustainable Development Goals」を略した言葉で、日本語の意味は(持続可能な開発目標)とされ、「2030年までに持続可能で多様性と包摂性のある社会を実現する」国際的な目標です。国連加盟193カ国の共通目標であり、2016年から2030年までの間に目標を達成するのが大きな目的です。

SDGsには17の目標があり、貧困、飢餓、健康と福祉、教育、ジェンダー平等、安全な水とトイレ、クリーンエネルギー、働き方、技術革新、不平等を無くす、パートナーシップなどが国際サミットで掲げられました。また、17の目標を細分化した169のターゲットも詳細に示されており、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」を基本方針として、目標が定められています。

つまり、SDGsは世界中の国が共通して持つ目標であり、世界全体が環境問題や社会問題に取り組むことを意味し、ESGはSDGsの取り組みに積極的に参加する企業の投資を後押しする役割を担っているという違いがあります。

ESGの事例を紹介

ESGの重要性が認識されているとはいえ、実際に国内企業でESGを実践する企業があるのか疑問を持つ方もいらっしゃるでしょう。

そこで下記では、世界的に潮流になっているESGに取り組む国内企業の事例を紹介します。

エステー株式会社の取り組み

出典:エステー株式会社

エステー株式会社のESGの取り組みは、独自の空気ビジネスの新技術を活用した環境・社会のサステナビリティの実現です。消費者に安心・安全な製品やサービスを提供することを「企業の社会的責任」と認識し、様々な対策に取り組んでいます。

具体的には職場環境の整備や人材育成の強化、製品や製造、物流のプロセスを見直すことで、環境への影響の低減に努めています。

ハウスコム株式会社の取り組み

出典:ハウスコム株式会社

ハウスコム株式会社のESGの取り組みは、「住まいを通して人を幸せにする世界を創る」という目標のもと、住まいのサービス業を通じたサステナビリティの実現です。SDGsの目標達成、環境問題や社会問題に配慮した企業体質にすることが、「企業の社会的責任」と認識し、様々な対策に取り組んでいます。

具体的には、男性中心・長時間労働社会から脱却を目指す活動、子育てサポート企業として厚生労働省「くるみん」認定の取得、残業時間低減の仕組み作り、再生可能エネルギーへの切替など、企業運営の強化に努めています。

ESGに取り組み企業価値を高めよう

世界的にも潮流になりつつあるESG投資は、社会問題や環境問題、企業のガバナンスに配慮しなければ企業価値が高まらない時代です。今後企業価値を高めたり、ブランディングを向上させ多くの投資家から評価を受けるには、ESGは欠かせないものになってきます。

SDGs、CSRとの関連性を把握した上で、ESG投資7つの手法を活用しながら今後は日本企業一団となってESGに積極的に取り組む必要があります。

株式会社ウイルズでは、ESG投資の世界的な拡大が予測できることから、企業へESGソリューションサービスの提供を行っています。コンテンツ制作から分析、リスクマネジメントなど持続可能な開発目標(SDGs)などを関連付けながら、効果的なESG開示を支援しています。サポート実績も多数ありますので詳しく知りたい方は下記ページもチェックください。

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