株主総会と取締役会の違いとは?どちらが先?決議事項など違いを解説

株主総会・決算説明会

株主総会と取締役会。どちらもニュース等でよく耳にしますが、それぞれで決議する内容やその役割の違いについて説明できる人は少ないのではないでしょうか。

本記事では株主総会と取締役会それぞれが開催される理由決議できる事項の違い、どちらが先に開催されるかといった順番についても解説。

「株主総会と取締役会の違いが分からない」「それぞれの決議事項について知りたい」という方はぜひチェックしてみてください。

『バーチャル株主総会』運営サービスはこちら

株主と取締役の違いとは

株主と取締役の違いは何でしょうか。

株主とは

まず、株主とは株式会社が発行している株式を保有する個人または法人のことを言います。

株式会社においては、株式を通じて会社に出資している人が会社の所有者です。実際の会社の経営自体は取締役に任せていますが、経営方針を決めたり取締役など会社の経営に関わる人選をしたり、会社の重要な意思決定をする権利は株主が持っています。

また、会社が得た利益の一部を配当金として受け取る権利も有しているため、経営不振によって不利益を被らないよう、常に会社の経営を監督しています。

株の持ち株比率(株式保有割合)が大きい株主ほど、それに比例して経営に対する発言力・影響力は大きくなります

取締役とは

取締役とは、会社の代表として普段の業務執行において意思決定をする人のことです。全ての株式会社に必ず設置しなくてはいけません。

取締役の選任・解任は会社の経営に多大な影響を及ぼすため、株主総会で株主によって決議されます。取締役は会社の経営を委任されており、法令・定款・株主総会の決議を遵守し忠実にその職務を行う「忠実義務」を課されています。

また、取締役が複数いる場合は他の取締役が職務に反する行為を行わないよう、互いに監視しあう「監視義務」も課せられています。

もし職務違反があった場合は、自身の行為だけでなく他の取締役の行為についても連帯して責任を負うことがあります。

株主と取締役との違いを簡単に言うと、株主は『スポンサー』取締役は会社の『メンバー』です。

株主と取締役は兼任することも可能ですので中小企業であれば、取締役が株式を保有しており「株主=取締役」となっているケースも珍しくありません。

株主総会とは

では、株主総会とは一体どんな集まりなのでしょうか?

株主総会とは、株主によって構成され、会社の重要な意思決定が行われる機関です。株式会社では必ず設置しなくてはいけません。

株主総会では、会社の重要な事項について所有者である株主が決議を行います。

会社は出資者である株主の意向を無視して経営に関する重要事項を決定することはできません。出資者がいなくなってしまったら、会社の経営は困難になるでしょう。

もし、株主総会を開催しなかったり、開催しても手続きに法令違反がある状態のまま人事異動や役員報酬の改定などを行ってしまうと、株主から『総会決議無効』・『無効確認』の訴えを起こされ、決議したこと全てが白紙となる恐れもあります。

また、株主は会社に関する一切の事柄について決定する権利を持っていますが、会社の運営にかかる全ての事項で決議を行っていては、迅速な経営を行うことができません。

そのため、取締役会を設置している会社では、法律と定款で特に定められた事項のみを株主総会で決議し、その他の日常業務等を行う上で必要な決定は取締役会で行うこととなっています。

以下の項より『取締役会を設置している場合』・『非設置の場合』それぞれの株主総会の決議事項の一覧を紹介します。

株主総会の決議事項一覧

株主総会で決議できる事項は『取締役会』を設置しているかどうかによって異なります。

取締役会設置の場合

取締役会を設置している会社の場合、株主総会では会社法で定められた重要事項と定款に定めた事項に限り、決議できることになっています。

取締役会を設置している会社では、経営と所有の分離が明確に図られており、多数の株主がいるケースも少なくありません。

そのため、株主総会では重要事項のみを決議し、その他の業務に関する事項の決定は経営陣に任せているのです。

株主総会での決議事項とされている主なものは以下の通りです。

  • 取締役や監査役などの選任や解任に関する事項
  • 定款変更・合併・解散など、会社の基礎的な事項や組織の変更に関する事項
  • 株式の併合や剰余金の配当など、株主の利益に直結する事項
  • 取締役が決議することがリスクになる事項(取締役の報酬)
  • 法律を逸脱しないようにするための取り決めについて

取締役会非設置の場合

取締役会を設置していない会社の場合、株主総会では会社法に規定する事項はもちろん、株式会社の組織・運営・管理その他、会社に関するあらゆる事項を決議できることになっています。

取締役会非設置会社は中小企業などの非公開会社であり、株主と会社の関係が密接なため、株主だけで決定できる事項が多いです。

取締役は株主総会での決定に従い、会社の運営を行います。

『バーチャル株主総会』運営サービスはこちら

取締役会とは

取締役会とは3人以上の取締役によって構成されており、会社の業務執行の意思決定を行う機関です。公開会社では必ず設置しなくてはいけません。

(※非公開会社では「取締役」は必ず必要ですが、「取締役会」設置の義務はありません。ただし、取締役3名以上・監査役1名以上で取締役会を任意に設置することは可能です。)

会社の経営にあたって決議すべき事項は多くあります。

しかし、決議のつど株主総会を開催すると大変手間がかかるため、取締役会では、代表取締役が一人では決められないものの、株主総会で決議するほどではない事項を取り扱う場合に開催されます。

定款の変更や合併など会社の重要な事項を決定する株主総会に対し、取締役会では日常的な業務に関する事項を決めているのです。

具体的な取締役会の役割としては以下の3つがあります。

  • 業務執行についての決定
  • 取締役の業務執行の監督
  • 代表取締役の選定・解職

中には取締役会を開催せず、議事録だけを作成して「取締役会を開催したことにする」といった会社も存在します。

株主総会ほどの大きな議題は取り扱わないものの、取締役会を適切に開催していなければ、のちのちトラブルのもととなったり決議事項が無効になったりする恐れがありますので注意しましょう。

取締役会は業務の執行に欠かせない組織です。その運用が内輪同士の馴れ合いやいい加減なものになってしまってはいけません。

取締役会の決議事項一覧

取締役会の決議事項は先に挙げた通り「業務執行についての決定」・「取締役の業務執行の監督」・「代表取締役の選定・解職」の3つに分けられます。

「業務執行についての決定」の具体的な内容については以下の通りです。

  • 重要な財産の処分または譲受け
  • 多額の借財
  • 支配人などの重要な使用人の選任・解任
  • 支店などの重要な組織の設置・変更・廃止
  • 社債の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
  • 内部統制システムの整備
  • 定款の定めに基づく役員等の責任の一部免除

「取締役の業務執行の監督」とは、取締役会で決定し代表取締役などが実行することとなった業務の状況について、各取締役に監督する役割があるというものです。

そのため、代表取締役は業務の執行状況について3ヶ月に1回以上取締役会に報告しなければいけません。この報告は義務となっています。

これに加えて「代表取締役の選定・解職」までが取締役会の主な決議事項となります。取締役会で決議する事項には、このほか以下に挙げるものも含まれます。

  • 譲渡制限株式の譲渡・承認の取得
  • 株主総会の招集に関する事項の決定
  • 利益相反取引・競業取引の承認

『バーチャル株主総会』運営サービスはこちら

株主総会と取締役会の違いとは

株主総会と取締役会の違いについて、以下の項で分かりやすくまとめました。

①決議事項の違い

株主総会と取締役会では決議できる事項が違います。

所有と経営の分離を図るため、株主総会では会社経営に関する重要事項を、取締役会では業務執行に関する事項を決定します。

決議事項の具体的な内容の違いについては上記の「株主総会の決議事項一覧」「取締役会の決議事項一覧」で説明した通りです。

②決議要件の違い

株主総会と取締役会では決議できる要件が違います。

株主総会では決議する議題に応じて、それぞれ以下のように決議要件が異なっています。

  • 普通決議・・・議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の過半数の賛成が必要
  • 特別決議・・・議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合はその割合)以上の賛成が必要
  • 特殊決議・・・議決権を行使できる株主の半数かつ当該株主の議決権の3分の2以上の賛成または総株主の半数でかつ総株主の議決権の4分の3以上の賛成が必要

これに対し、取締役会ではどのような議題の決議でも基本的には「取締役の過半数が出席し、出席者の過半数の賛成が必要」となっています

③招集手続きの違い

株主総会と取締役会では招集手続きが違います。

株主総会の招集については、取締役会で決定し代表取締役が招集します。取締役会非設置会社では、取締役が招集を行います。

一方、取締役会の招集は各取締役が行うこととなっていますが、定款等の規定により招集する取締役が決められていることが多くなっています。

また、招集通知に関しては基本的にどちらも1週間前までに書面で通知を発送しなくてはいけません。

しかし、そのうち公開会社または書面や電子での投票を行う非公開会社の株主総会では2週間前までと定められています。一方、取締役会については定款の定め次第で招集期間を1週間よりも短く設定することが可能です。

開催自体も、取締役会は実際に会議を開かず書面上で決議できる「書面決議」が可能になりました。(※こちらも定款の定めが必要です。)

会社の重要事項を決める株主総会の方が、取締役会よりも招集手続きや開催方法は厳格です。

④議事録の残し方の違い

株主総会と取締役会では議事録の残し方が違います。

どちらも議事録は本社に10年間保管しておかなくてはいけません。

しかし、株主総会議事録は本社のほか支社・支店にもコピーを5年間保管しておく必要があり、一方、取締役会議事録は本社で保管しておくのみで良いとされています。

『バーチャル株主総会』運営サービスはこちら

株主総会と取締役会を開催する順番は?どちらが先?

株主総会と取締役会では、どちらを先に開催するべきなのでしょうか?

この場合は取締役会が先です。取締役会→株主総会の順で開催します。

なぜなら、取締役会の決議事項に「株主総会の招集に関する事項の決定」があり、ここで株主総会で決議する事項や招集日時・場所を決定するためです。

株主総会と取締役(会)の権限移譲とは

株主総会と取締役(会)が設置されている会社であれば、意思決定の迅速化や会社経営の効率化を図るため、株主総会から取締役(会)へ/取締役(会)から株主総会へと、互いに決議の権限を委譲することができます。

株主総会から取締役(会)への権限移譲

<取締役会設置会社の場合>
株主総会で決議する事項でも、定款にあらかじめ定めておけば、取締役会に権限を移譲できます

例えば、自己株式の取得や剰余金の配当に関することについて、取締役会で決議を取れるようになります。

株主総会から取締役会へ一部の権限を委譲することで株主総会開催にかかる手間が省けますので会社に取ってはメリットになるでしょう。

ただ、株主総会の持つ権限全てを取締役会に移譲することはできません。

会社法が「株主総会の決議事項としているもの」については、定款の定めに関わらずその権限を他の機関に移すことはできませんので注意が必要です。

また、株主の利益に関して決議する権限を委譲することで株主の反発を受ける可能性もありますので慎重に行わなくてはいけません。

<取締役会非設置会社の場合>
取締役会を設置していない会社では、株主総会で会社に関するあらゆる事項を決議します。

非公開の中小企業に多いケースで、こうした会社では取締役=株主となっていることも少なくないため、株主総会開催にかかる手間が省けるといったくらいで株主総会から取締役に権限を移譲するメリットはそれほどありません。

取締役(会)から株主総会への権限移譲

取締役または取締役会の権限を株主総会に移譲することに関しては、どんな事柄でも問題ありません

取締役または取締役会が決められることは株主総会でも決議できるためです。

ただし、あまり権限を移譲しすぎると、取締役または取締役会が経営の立場で会社をコントロールすることが難しくなるため、どこまでの権限を移譲するかはよく検討する必要があるでしょう。

株主総会は会社の重要な意思決定機関

ここまで解説してきた通り、株主総会は会社の重要な意思決定機関であり、会社の根幹に関わる事項を決める重要なイベントでもあります。適切に開催することで、会社のオーナーである株主の意向をしっかりと聞き、経営に反映しなくてはいけません。

円滑な株主総会の運営には、バーチャル株主総会サービスがおすすめです。本サービスは双方向型の動画配信サービスにより、オンライン上でリアルタイムの閲覧・質疑応答・議決権行使の参加が可能

バーチャルオンリー型はもちろん、物理的な会場が存在する通常形式の株主総会と合わせて行うハイブリッド型バーチャル株主総会も開催できます

現在、バーチャル株主総会サービスは多くの上場企業で導入が進んでいます。ぜひ活用を検討してみてはいかがでしょうか。気になる方は以下よりぜひチェックしてみてください。

『バーチャル株主総会』運営サービスはこちら

タイトルとURLをコピーしました